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コラム・レポート
企業におけるメンタルヘルス第3回

頑張る人たち

前回までは人員削減や組織再編などにより、解雇・配置転換における陥りやすい心理状態について論述しました。
今回は、人員整理等により削減された予算・人員での現場にクローズアップしてみたいと思います。
例えば、もともと10人の部署だったとしましょう。
会社から人員削減計画が打ち出され、部署内の正社員2名と派遣社員2名の合計4名が解雇または自主退職をしました。残ったメンバーは、社員5名と管理者1名の6名です。 もちろん、やる気があり能力も十分な、優秀な人材が残りました。優秀な彼らは、たとえ人員削減があったとしても、お客さまに迷惑をかけるわけにはいかないと、お互いに協力しあって、昼も夜もなく働き、必死で、いなくなった4人分の仕事をカバーしました。
時々、頭が痛いと体調不良を訴えたメンバーもいましたが、部長は、「君は優秀な男だ!あと少しがんばってくれ!」と励まし、なんとか危機を乗り越えることができました。

高すぎる目標と完璧を目指す仕事の仕方

会社に残ったメンバーは、人数が減っているにも関わらず、お客さまに迷惑をかけないようにがんばりました。お互いに協力し合って昼も夜もなく働く中で、他人と協力し合うということは、かなり自分の都合をおさえなければできません。
この例の場合“お互いに”譲り合っているでしょうから、少しは、心理的な負担は軽くなると思いますが、これが、「病気になりやすい仕事の仕方」の一つでもあります。
さらに、部長は、心の病気のサインのひとつである頭痛や肩こりなどを、ちょっとした体調不良と思いこみ、見逃してしまいました。
この例では、一般社員に心の病気のサインがでてしまったわけですが、もしも、部長が社員と一緒になって働いていれば病気になってしまっていたかも知れませんし、人員削減計画を打ち出した経営陣も、厳しい情勢を乗りきるための対応に疲れきってしまったり、解雇を通知する苦しみから、心の病にかかってしまったかも知れません。

激動の時代の人材教育

ここ数年で、消費者の購買意識の多様化、ライフスタイルの多様化などの影響から、会社の歴史があるとか有名なブランドだからというだけでは、生き残ることのできない、厳しい時代に突入したとお感じの方も多いと思います。
変化の激しい環境で求められるのは、迅速な意思決定と行動です。
そのようなことから、階層の少ないフラットな組織へと人事制度の見直しを急ぐ企業も少なくありません。
人事制度の見直しとともに重要なのは、人材の教育です。
前回、心の病が最も多いのがミドル世代の30代というデータをご紹介しました。次いで多いのが40代なのですが、企業全体を考えても、メンタルヘルス対策を考えても、その成功のカギを握っているのがこのミドル世代です。
現場で若い人材を教育し、指導する彼らに対する教育が重要になってきています。

社員力の結束 -忙しいのはなぜだ?-

近年、人間関係が希薄になっていると言われており、ビジネスではますますコミュニケーション力が注目されています。
当社でも、ミドル世代を対象にした管理者研修などでは、コーチングや質問力、ファシリティーション力、といった内容を要望されることが多くなりました。
雇用形態の多様化や若年層から中間層の人材の流動が激しい時代の中、どのように企業文化を次世代に継承していくかを重要な問題ととらえ、一方的に物事を主張するのではなく、相手の経験や考え方の癖なども踏まえたうえで、考えさせながら物事を習得させるような方法を管理者が習得し、次世代を育成していくという姿勢が見えます。
また、かつて多くの企業では、新入社員は戦力ではなく、入社後の数年間は、たくさん失敗をさせて、一人前の戦力へとじっくり育てていく期間であると考えられる余裕がありましたが、近年では、ミドル世代の管理者は、短期的な成果を出すことが求められ、若い人材に失敗させるチャンスを与えることが少なくなりました。
その結果、若い人材が育つこともなく、ますます、自分だけが忙しくなり、若い人材は働き甲斐や職場に自分の居場所を見つけられず、仕事を辞めてしまうという、悪循環が生じています。
その結果、職場の雰囲気は悪化し、過剰なストレスを抱えたミドル世代の管理者たちは、心の病にかかりやすくなることでしょう。
こうした悪循環を断ち切るためには、意識改革が必要です。
教育をする立場であるミドル世代の管理者たちが、自らの入社した当時を思い出すことが大切です。
若い人材は財産であり、若い人材の失敗は、将来への投資であるという意識を持って後輩を育てていけば、きっと、若い世代の人材も期待に応えてくれます。


(第4回に続く  企業におけるメンタルヘルス第4回

(シリーズ-企業におけるメンタルヘルス全4回)

企業におけるメンタルヘルス第1回
企業におけるメンタルヘルス第2回

2011.03.30  長野知鶴  (組織|人事・人材開発|教育研修|カウンセリング)

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